通訳者報酬の実態
2010年 08月 08日
ある企業の社内会議の通訳に行った際のこと。
本当は内緒のはずなのですが、うっかりクライアント企業のエグゼクティブが漏らしてしまいました。
「今日、君ひとりをhireしてXX万円かかってるんだよね、ハハハ」
ガーン!
ハハハって・・・。
そのXX万円は私の通訳エージェントに払っている金額なのだろうけど、私がもらっているのは半分以下!!
驚愕の事実でした。
なぜこんなに驚くかというと、「半分以下」なのもそうですが、
1) そもそも私はフリーランスになったばかりなので報酬レートが低い
=>社内通訳経験はエージェントにはまったく評価してもらえない。8年も業界を代表する企業でさまざまな分野をカバーして知識を積み上げ、同通ブースの経験も重ねてきたとしても。現状景気も悪く、市場は通訳者供給過多なので、報酬査定では思い切り足元を見られる。
2) で、報酬査定時に言われたコメントは「最初から高いレートにするとお客さんに紹介しづらい、声がかかりにくくなるから、低めのほうが」
=>てっきり私にまわってくるお仕事は、エージェントがクライアントにベテラン通訳よりも低めの料金を提示しているのかと思いきや、今回のXX万円はほぼ同額でした。全部の仕事がそうではないのかもしれませんが。けれど私の報酬が低い(=エージェントのマージンが大きい)からといっても仕事が多くもらえるわけでもない。もちろんフリーランスのベテラン通訳と自分の実力差は十分認識できているし、エージェントもお客さんも、フリーの経験が豊富だったり以前使ったことのある通訳者のほうがそりゃ安心できるのでしょうが。
3) エージェントの仕事って。。。
=>聞いてた仕事内容と現場で必要とされる通訳が全く違うこともよくあります。今回は内容もスケジュールもどんどん変わってしまい、資料を見る機会もなくいきなり製品技術の電話会議を通訳することに。事前勉強と手持ちの知識でなんとか乗り切りはしましたが・・・。もう少し会議の情報を正確に把握してもらえないものなのか、と思いました。「事前に資料出せません」と言われても、そこを何とかうまい事お客さんから引き出すのも、仕事なのではないかと。
(それとクライアントに対するExpectation Managementが出来てない場合も。あるクライアント側担当者は「通訳さんも分からない言葉があったら、途中でどんどん質問しながらプレゼン通訳やってほしいんですよ」・・・(私の心の声)いえいえ、私は会議の参加者ではないし私の細かい質問で時間をつぶすわけに行かないでしょう・・・まあ、こんなのまだいい方ですが。)
そして、知り合いの経験豊富なベテラン通訳の方も言っていましたが、かなりの時間と労力を費やして準備をせざるをえない仕事になると、「最終的には時給500円!」・・・決して尾ひれのついたコメントではありません。
フリーの通訳者(とくに私のような新参者)はこんな待遇でがっつりマージンを取られ、土壇場でも「出来て当たり前」の仕事ぶりを要求される・・・。
先日知り合ったある経営者の方も言っていました「通訳ほど報酬の低い仕事はない。あんなに頭使うし、勉強して色んな知識を持っていて、語学力も長けているのに、もったいない」
文字通り「器用貧乏」になりやすい仕事だなと思います。
景気が上向きになれば仕事は多くなるでしょうが、根本的に通訳報酬体系は景気にかかわらずこの20年ほど変わっていないらしいので、この先どうなることやら・・・。
だんだん負け犬の遠吠えみたいになってきましたが、私と考えを同じくする人もいるかと思うのでとりあえず書いてみました。
こんなの書く暇があったら精進しろ、ですか? 分かってないな~・・・。
by crushburn | 2010-08-08 12:51 | 通訳 | Comments(3)