いよいよ3/3回目の鑑賞です。毎回引き込まれてがっつり鑑賞するので疲れも積み上がっていますが、速水さんの王子デビューをしっかり見届けました。
喪に服す王子を演じるからか、いつもの茶髪封印で黒髪で登場。物憂げ且つ誰が何を働きかけても心が動かされない様子です。それでもベンノとクルティザンヌとのパドカトルは速水さんの美しい動きが目を惹きます。
木下さんのベンノは踊ってない時のお芝居もよく考えられています。これは前回も感じたことですが。
米沢さんの白鳥を舞台で観るのは今回が初めてでしたが、難しいことをいとも軽々とこなし時に重力を感じさせない動きで驚きました。腕の動きもとても滑らかで本当に白鳥に見えてきます。第二幕のマイムも分かりやすくでもはっきりし過ぎずいい塩梅です。
中家さんのロットバルトは前回からさらに進化したように感じました。動きがより明確になり、白鳥たちに対する圧倒的な支配をより感じさせる力強さが現れていました。
2羽の白鳥は中島さんと花形さんの動きがよくシンクロしていて美しかったです。
第三幕の王女たちの踊りは実力派の御三方。奥田さんのイタリア王女も高速・複雑な振付を軽やかに華のある踊りで魅せてくれました。
スペインの踊りはベテランの4人なので大いに安心して見ていました。この踊りといえば浜崎さんのイメージなのですが、ほんとに残念ながら今シーズンで退団されるので今回はオペラグラスでじっくり拝見。くるみ割りの花のワルツでもリードポジションでしたし、動きもそして脚も綺麗な方なので惜しい限りです。
ロットバルトに連れられてきたオディールを見た瞬間、王子は何かを感じて手を取り舞台袖に2人で消えていったのですが、その後のPDDでも王子の惹かれっぷりが分かります。しっとり踊りながらふと手が離れたオディールを捕まえようとすると、スルッとかわされ一瞬「?」となってから視線でオディールを追う様子とか。一方オディールはロットバルトと耳打ちしながら王子を魅了し、白鳥を思い出された際にはこれみよがしにオデットと全く同じ動きをして心を誓った相手であると王子を確信させます。この辺りの米沢さんの表現もすごく上手くて観ている私も「そうよね、昨日の湖のあなたよね」と納得しそうでした。それと、途中米沢さんがアラベスクでポワントに立ち、速水さんの手が離れてから多分5秒以上ポーズを維持していてびっくり。軸の安定感が素晴らしいのでここまで立っていられるのですね。もちろんこの時は拍手喝采です。
お二人のパートナリングは、以前ドンキ映像配信の際も組んでいたので信頼感も既にあったと思いますし、何しろ大ベテランの米沢さんが相手なので今回の王子デビューでも速水さんは手堅くサポートしていました。
続く王子のソロは、速水さんお得意の高く空中姿勢の美しいジャンプや安定感抜群の回転の連続で存分に魅せ、全て決めてくれました。素晴らしかったです!! 踊り終わった後のポーズでご本人の表情にも現れてましたが、本当に会心の出来だったと思いますし、会場も拍手喝采、大いに歓喜していました。
そしてオディールのソロも、さすが米沢さん!と感嘆する内容。特に冒頭の回転は美しく、正面を向いた時も毎回足が綺麗に上がったまま一瞬停止できていて、ここはYoutubeで色々なダンサーを見ても停止せずに体が次の動きに流れて(流して?)しまうことも多いので、米沢さんの技術力の高さがよく分かります。
そしてコーダもお二人の技が競い合うように冴えてました。ここまでくるともう、技のデパートです!(笑)
速水さんのジャンプは前述の通り高く大きく美しく、高速回転も軸が安定していて素晴らしい。オディールという美しい女性を見つけた嬉しさが踊りに満ち溢れていました。米沢さんの32回転は、3回転を何度も入れつつ全くバランスが崩れない驚異的な精度、そして回転を終えて着地・ポーズする際も全く乱れず優雅にポーズまで持っていきます。慣性が働いている体の回転軸を短時間で減速するので一瞬不意に揺らいでから着地になりやすいと思いますが、さすがの安定軸で落ち着いて回り終わり易々とポーズを決めてしまうところはお見事としか言いようがありません。コーダの最後のポーズは、オディールの両手に頬を寄せ惚れ込んで舞い上がっている王子を見透かすかのように、米沢さんはゆっくり鷹揚に右手を後ろに引いていきました。手がゆっくりの方が、王子の心を落とし密かに勝ち誇った感が滲み出て個人的には好きです。
第四幕はコールドの見せ場なのですが、今回3回とも1階前方ブロックなのでフォーメーションが全く見られず😭 それでも皆さんの動きは体や手の角度もとても揃っていて美しかったです。
最後ロットバルトが兜を取られ白鳥たちに追い詰められる様子は、今までで一番危機迫る感があり中家さんの演技が光っていました。そして、湖から引き上げた王子の体を腕に抱え重い足取りでゆっくり歩くベンノ。木下さんの絶望感に満ちた見せ方が泣かせます。
・・・これで私の白鳥の湖ウィーク、全3回の鑑賞が終わってしまいました。観覧後も毎回あれこれ反芻したりYoutubeで他のダンサーの踊りを参照したり、何より白鳥の湖の楽曲が常に何かしら脳内連続再生されているので、他のことをあまり考える隙間がありませんでした。そして今でもまだ白鳥ブームが私の中で続いています・・・。
なお、翌日の小野・奥村ペアはインスタで舞台袖からの写真がアップされてましたが、見ただけでもう、溜め息ものです。オデットと王子のシーンの写真数枚でしたが、このお二人のケミストリーが醸し出す悲壮感、絶望感、それらを内包する美しさが、写真だけで十分伝わってきて、素晴らしい舞台だったのだろうと想像できます。この日のチケットを取らなかったことをちょっと後悔。
今回の公演も無事に終わったようで何より。後はエデュケーションで怪我から復帰する木村さんと速水さんのペアの白鳥を鑑賞して、今シーズン終了です。ひと月先ですが、今まで組んでいないペアだと思うので楽しみです。